「初恋の悪魔」最終回のあと石鹸になる夢を見た件

夢を見た。

若く魅力的な女の子になって、それなりに魅力的な男性に情熱的に言い寄られ、逃げても追い回され体に触れられて、嫌悪感のあまり石鹸(四角くて小さい、牛乳石鹸みたいな)になってしまう、という夢だった。

 

石鹸になっても彼女は話すことができ、彼はやっと冷静になってその言葉を聞く。そうなるまで、彼にとって彼女は性的に欲望する身体であって会話の対象ではなかったから。

彼は理性を取り戻し、もちろん後悔も反省もするが、それは彼女が身体を喪ったために過ぎず、本当に彼女の拒絶感を理解できたとは思えないという、なんか救いようのない夢だった。

 

わりと怖かったのでどきどきして午前4時に目が覚め、普通なら「ああ怖かった」と寝直すところだけど、

なんでこんな夢見たんだ?と考えた。

というか、数時間前に最終回を見届けたばかりの「初恋の悪魔」のことをなぜか考えた。

 

星砂のことを。

最終回で、多重人格者である星砂の後付けの方の人格が、彼女に恋した鈴之助に「もうすぐ消えてしまうから」と別れの挨拶にやって来る。

鈴之助は夜の公園で彼女に告白され、いわゆるいい感じになりながら、指一本触れないままたくさん会話を交わし、笑い合って「ありがとう」と別れる。

素敵なシーンだったが、下世話な視聴者として、私は少し不満を抱いた。もっとハグとかラブ的なやつはないの?と。

青年期も後半になって初めて恋を知った鈴之助は、奥手すぎて彼女に触れられなかったのでは、とも思った。

本当にそうだったのか。

 

主たる人格の星砂は、虎柄のスカジャンにパンツ姿で現れる。男性口調で気の強い刑事である。

第二の人格の星砂は女性的な服装を好み、控えめで依存的な表情をたたえ、それでも恩ある女性を助けようとする芯の強さを見せる。

二つの人格は同時には存在することはなく、全くの他人同士として意識されている。

これまで入れ替わりの間隔が長く、覚醒するたびに人生が大きく変わっていることから、互いを「勝手なことをする迷惑な存在」と疎んでいる様子もあった。

でも、彼女たちを見守ってきた医師は、最終回で久しぶりに戻ってきた主人格の星砂に

「あの子のこと好きなんだねえ/ずっとあなたのこと、守ってきてくれた子なんだもんね」

と言う。

主人格と比べて弱々しい第二人格が、主人格を守る?

わからない、逆ならわかるけど、そう思った。

 

さっき夢で石鹸になった、目の前の辛さから逃れるために全く違うものになった経験を経て、思い出した。

そういえば多重人格(解離性同一性障害)って、幼少期の虐待などのストレスが原因で発症するって聞いたことがある。

主人格の星砂が、小さい時から男勝りだったとは限らない。

松岡茉優ちゃんのルックスを持って生まれてきた星砂は、自分を守るために今のスタイルを選び、それでも守りきれない部分をカバーするために、別の人格に自分を明け渡したのかもしれない。

 

主人格は「強い女」なので、積極的に恋をしてセックスもした(らしい様子が、人格交代前に恋人に残した置き手紙で匂わされる)。

第二人格は、最後まで自分に指一本触れようとせず、でも身を投げ出して守ってくれる鈴之助に惹かれた。自分たちを守らなきゃいけないから。

 

そういうことだったのかもな、と、大好きなドラマをもう少し深く解釈できた気がする。

むしろ「なにが『よかったー』だ、お前は何もわかってねえ!」と苛立った自分の中の「もう少しわかってる部分」に、石鹸の夢を見せられたのかもしれない。

 

もっと何通りにも、登場人物それぞれの立場から読み解ける懐の深い作品だと思うけど、「私はこう見たよ」という話。

もう一回寝て、起きたら「初恋の悪魔」を中盤から見直そうと思います。